The Klein-Gordon Field (1)
Peskin-Schroeder : An Introduction to Quantum Field Theory を読んでいく.1章は飛ばして,Chapter 2 - The Klein Gordon Field から始める.
2.1. The Necessity of the Field Viewpoint
ここでは,通常の量子力学では因果律が犯されてしまうことを確認し,場の理論を含む,多粒子理論の必要性を述べる.
まず,位置 から への自由粒子の伝播振幅 を考える.
ここで,
である.非相対論的エネルギーは, なので,
となる.ここで,完全性条件
を使った*1.
量子力学における関係式
を使って計算を進めると,
となる. 積分は全て同じ結果を与えるため, 積分のみ実行すると,
したがって,
を得る.これは全ての についてゼロでなく,粒子が任意の短時間にどの2点間も伝播できることを意味している.
相対論的エネルギーの式: を使えば解決されると思うかもしれないが,以下で見るように,実はそうもいかない.非相対論的な場合からの類推で, は以下のように計算できる.
ここで,
なので,結局,
となる.この積分は Bessel 関数で評価できるが,ここでは停留値法を使って, (光円錐の外側)の漸近的振る舞いを調べることにする.
少し遡って,
の第二項について考える. の変数変換を施して第二項を計算してゆくと,
となり, とすれば被積分関数は第一項と同じ形となる.ゆえに,
と変形できる.ここで,exponential の中身を位相関数: とする.
これの停留値を求めるには, を解けばよく,これを満たす を とすると,
ここで以下のような, から に伸びる長方形型の積分経路を考えると,端は無視できて,コーシーの積分定理より2つの横向きの経路積分の値は一致する.
停留値法より,
ここで,
より,
では,
であることを用いた.
よって,伝播振幅は小さいが,光円錐の外側でゼロでなく,因果律は未だに犯されている.
本来,完全性条件は世の中の全ての状態を足し合わせて作られるべきだが,従来の量子力学では1粒子状態のみを考慮していた.それゆえ不完全なものであり,このような因果律違反が起こる.対して,場の量子論は2.4節で議論するが,因果律の問題をきれいに解決する.