ただの物理屋

主に物理に関する記事を書いています。

The Dirac Field (3)

今回から 3.2 節です.

3.2 The Dirac Equation

ここでは Lorentz 群の表現のうち,スピン 1/2 に対応するものを探して議論する.これを行うために Dirac の方法を使う.つまり,反交換関係

\displaystyle{
\{\gamma^{\mu}, \gamma^{\nu}\} \equiv \gamma^{\mu}\gamma^{\nu} + \gamma^{\nu}\gamma^{\mu} = 2g^{\mu\nu} \times \boldsymbol{1}_{n\times n} \quad \text{(Dirac algebra)} \tag{3.22}}


を満たす4つの  n\times n 行列  \gamma^{\mu} の組を仮定する. このとき, n 次元 Lorentz 代数の生成子を以下のように書くことができる.

\displaystyle{
S^{\mu\nu} = \frac{i}{4}[\gamma^{\mu}, \gamma^{\nu}]. \tag{3.23}
}


実際,(3.22) を使えば  S^{\mu\nu} が (3.17) を満たすことが確認できる.

仮にこの表式を3次元 Euclid 空間で使うと

\displaystyle{
\gamma^{j} \equiv i\sigma^{j} \qquad \text{(Pauli sigma matrices)}
}


となる.Pauli 行列に関する公式

\displaystyle{
\sigma^i\sigma^j = \delta^{ij} + i\epsilon^{ijk}\sigma^k
}


を用いると,反交換関係は以下のようになる.

\displaystyle{
\{\gamma^i, \gamma^j\} = -2\delta^{ij}.
}


また,このとき

\displaystyle{
S^{ij} = \frac{1}{2}\epsilon^{ijk}\sigma^k \tag{3.24}
}


となり,回転群の2次元表現として認識できる.

では4次元 Minkowski 空間で  \gamma^{\mu} を探そう.すぐに思いつく方法としては,上で扱った3つの行列  {\gamma}^j(Pauli 行列)と反可換な新たな  2\times 2 行列を見つけることである. これを

\begin{equation}
A = \begin{pmatrix}
a & b \\
c & d
\end{pmatrix}
\end{equation}


と定義すると,

\begin{align}
A\sigma^1 &+ \sigma^1A = 0 \\
A\sigma^2 &+ \sigma^2A = 0 \\
A\sigma^3 &+ \sigma^3A = 0
\end{align}


を計算すればよいことになる*1.その結果は  a = b = c = d = 0 となり,3つの Pauli 行列と反可換な  2\times 2 行列は存在しないことが分かる.
では  3\times 3 行列で探してみよう. \gamma 行列の性質 (3.22) から, \mu = \nu = 0 のとき  ({\gamma}^0)^2 = 1 となる. したがって  {\gamma}^0固有値 \pm 1 である.また, \mu = \nu = i のとき  ({\gamma}^i)^2 = -1 となる. したがって  {\gamma}^i固有値 \pm i である. ここで  \mu \neq \nu のとき,


\DeclareMathOperator{\Tr}{Tr}
\begin{align}
\Tr(\gamma^{\mu}\gamma^{\nu}\gamma^{\nu}) &= \Tr\left((2g^{\mu\nu} - \gamma^{\nu}\gamma^{\mu})\gamma^{\nu}\right) \\
&= \Tr(-\gamma^{\nu}\gamma^{\mu}\gamma^{\nu}) \\
&= -\Tr(\gamma^{\mu}\gamma^{\nu}\gamma^{\nu}) \\
&= 0.
\end{align}


 ({\gamma}^{\nu})^2 = \pm 1 を使うと左辺は  \pm\Tr({\gamma}^{\mu}) となる.よって, \Tr({\gamma}^{\mu}) = 0 \Tr(A) = \text{(行列 $A$ の固有値の総和)} であり, \gamma 行列の固有値 \pm 1 または  \pm i なので,これがゼロとなるには  \gamma 行列は偶数次でなければならない.
以上より,次は  4\times4 だ.こうして, 2\times 2 ブロック形式の Dirac 代数の表現を書くことができる.


\begin{equation}
\gamma^0 = \begin{pmatrix}
0 & 1 \\
1 & 0
\end{pmatrix}; \qquad \begin{pmatrix}
0 & \sigma^i \\
-\sigma^i & 0
\end{pmatrix}. \tag{3.25}
\end{equation}


この表現は Weyl あるいは chiral 表現と呼ばれる.なお,行列中の1は  2\times 2 単位行列で,行列全体としては  4\times 4 の表式であることに注意しよう.

この表現では,ブーストと回転の生成子はそれぞれ以下のようになる.


\begin{align}
S^{0i} &= \frac{i}{4}[\gamma^0, \gamma^i] = -\frac{i}{2}\begin{pmatrix}
\sigma^i & 0 \\
0 & -\sigma^i
\end{pmatrix}, \tag{3.26} \\
S^{ij} &=  \frac{i}{4}[\gamma^i, \gamma^j] = \frac{1}{2}\epsilon^{ijk}\begin{pmatrix}
\sigma^k & 0 \\
0 & \sigma^k
\end{pmatrix} \equiv \frac{1}{2}\epsilon^{ijk}\Sigma^k. \tag{3.27}
\end{align}


 \Sigma^{k} は4次元に拡張した Pauli 行列である.これは3次元の場合の表式 (3.24) を再現している.
さて,生成子 (3.26),(3.27) によってなされる変換は


\begin{equation}
\exp(-\frac{i}{2}\omega_{\mu\nu}S^{\mu\nu})
\end{equation}


のように書けるのだった.この行列によって変換される4成分の場  \psiDirac spinor という. 今, (S^{0i})^{\dagger} \neq S^{0i} のようにブーストの生成子がエルミートでないので,実行されるブーストはユニタリでない.

まとめ

今回はここまでにして,次回に 3.2 節を最後までやります.ここでは Dirac \gamma 行列が初めて出てきました. それを用いて書かれる Dirac 代数の Weyl 表現を学び,ブーストや回転の変換行列を導出しました. 4\times 4 行列を  2\times 2 のブロックに分ける表式には次第に慣れていきましょう.
最後に少し言及しましたが,今の変換行列はユニタリではありません.それゆえ,Dirac 理論の Lagrangian を考えるには少し工夫が必要となります.

*1:なぜなら,異なる行列の反交換関係はゼロだから.

The Dirac Field (2)

さて,ここでは  n\times n 行列  M(\Lambda) によって与えられる  n 成分の場  \Phi_{a} の Lorentz 変換

\displaystyle{
\Phi_a(x) \rightarrow M_{ab}(\Lambda)\Phi_b(\Lambda^{-1}x) \tag{3.8}
}


を考えよう.なお,以降では表記を簡単にするために引数を省略して

\displaystyle{
\Phi \rightarrow M(\Lambda)\Phi \tag{3.9}
}


と書くことにする.

 M(\Lambda) が満たすべき性質の一つは,二つの連続する Lorentz 変換が新たな一つの Lorentz 変換になるということだ.つまり, \Lambda'' = \Lambda'\Lambda に対して次式が成り立つ.

\displaystyle{
\Phi \rightarrow M(\Lambda')M(\Lambda)\Phi = M(\Lambda'')\Phi. \tag{3.10}
}


したがって,行列  M(\Lambda) は Lorentz 群の  n 次元表現をつくらなければならない.

【補足】群の表現

群論の知識が浅い方に向けて,ざっくりした解説を添えておく.
 G の各元  g_i に対し, n正則行列  D(g_i) が与えられ, g_ig_j = g_k に対応して  D(g_i)D(g_j) = D(g_k) が成り立っているとき, g から  D(g) への写像を群  G の表現という.
また,このとき  D(g) を群  G の表現行列という.

またここでの詳細は割愛するが,物理でよく使う表現は基本表現と随伴表現である.

【補足2】群の generator(生成子)

線形 Lie 群  G が与えられたとき,任意の  t \in \mathbb{C} に対して  \exp(tX) \in G となる  X G の generator という.
また,generator が満たす交換関係を Lie 代数という.



まずは簡単な群について考えてみよう. 量子力学でなじみ深く,スピン  1/2 と関係していた  SU(2) 群の基本表現は,

\displaystyle{
U = e^{-i\theta^i\sigma^i/2}. \tag{3.11}
}


ここで  \theta^i は任意のパラメータで, \sigma^i は Pauli 行列であった*1
また,これから分かるように, SU(2) の generator は Pauli 行列である.

次は3次元の回転群を考えよう. 例えば, x 軸周りの角度  \alpha 回転は次のように表される.


\begin{equation}
R_x = \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 \\
0 & \cos\alpha & -\sin\alpha \\
0 & \sin\alpha & \cos\alpha
\end{pmatrix}.
\end{equation}


回転角  \alpha が微小なとき,これを展開すると,


\begin{equation}
R_x = \exp\left[-i\alpha
\begin{pmatrix}
0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & -i \\
0 & i & 0
\end{pmatrix}
\right].
\end{equation}


 y,\ z 軸周りの回転


\begin{equation}
R_y = \begin{pmatrix}
\cos\beta & 0 & \sin\beta \\
0 & 1 & 0 \\
-\sin\beta & 0 & \cos\beta
\end{pmatrix},\quad R_z = \begin{pmatrix}
\cos\gamma & -\sin\gamma & 0 \\
\sin\gamma & \cos\gamma & 0 \\
0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
\end{equation}


に対しても同様にすると,回転群の generator は

\displaystyle{
J^x = \begin{pmatrix}
0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & -i \\
0 & i & 0
\end{pmatrix},\ J^y = \begin{pmatrix}
0 & 0 & i \\
0 & 0 & 0 \\
-i & 0 & 0
\end{pmatrix},\ J^z = \begin{pmatrix}
0 & -i & 0 \\
i & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}.}


これらはまさに角運動量演算子であり,以下の交換関係

\displaystyle{
[J^i,J^j] = i\epsilon^{ijk}J^k \tag{3.12}
}


を満たす.展開後の式に立ち戻れば結局,回転は

\displaystyle{
R = \exp[-i\theta^iJ^i] \tag{3.13}
}


で与えられるということだ( \alpha などをまとめて  \theta^i と書き直している).
ここで

\displaystyle{
J^i \rightarrow \frac{\sigma^i}{2} \tag{3.14}
}


とすると (3.11) になるが,このとき全角運動量の大きさの二乗は  3/4 = 1/2(1/2 + 1) となるため,スピン  1/2 に対応することになる.

Lorentz 群に話を戻そう.やりたいことは,Lorentz 群の generator が満たす交換関係を見つけ,代数を決定することだ. 回転群については,generator を微分演算子を用いて書き直した以下の表式

\displaystyle{
\boldsymbol{J} = \boldsymbol{x} \times \boldsymbol{p} = \boldsymbol{x} \times (-i\nabla) \tag{3.15}
}


から,角運動量演算子の交換関係 (3.12) が得られる.
ここで天下り的ではあるが,演算子を反対称に組む.

\displaystyle{
J^{ij} = -i(x^i\nabla^j - x^j\nabla^i).
}


こうすると,4次元 Lorentz 変換への一般化が自然になされる.

\displaystyle{
J^{\mu\nu} = -i(x^{\mu}\partial^{\nu} - x^{\nu}\partial^{\mu}). \tag{3.16}
}


これら6つの演算子が,Lorentz 群のブースト(3つ)と回転(3つ)に対応している.

Lorentz 代数は演算子 (3.16) が満たす交換関係によって決定される.愚直に計算すれば以下を得る.

\displaystyle{
[J^{\mu\nu}, J^{\rho\sigma}] = i(g^{\nu\rho}J^{\mu\sigma} - g^{\mu\rho}J^{\nu\sigma} - g^{\nu\sigma}J^{\mu\rho} + g^{\mu\sigma}J^{\nu\rho}). \tag{3.17}
}


最後に,具体的な例で確認してみよう. 次の  4\times 4 行列を考える.

\displaystyle{
(J^{\mu\nu})_{\alpha\beta} = i({\delta^{\mu}}_{\alpha}{\delta^{\nu}}_{\beta} - {\delta^{\mu}}_{\beta}{\delta^{\nu}}_{\alpha}). \tag{3.18}
}


なお,これが (3.17) を満たしていることは容易に確認できる.
さて,4元ベクトルの無限小変換を与える行列

\displaystyle{
\exp[-\frac{i}{2}\omega_{\mu\nu}{(J^{\mu\nu})^{\alpha}}_{\beta}]
}


を微小パラメータ  \omega_{\mu\nu} で展開すれば,変換は以下のように書ける.

\displaystyle{
V^{\alpha} = ({\delta^{\alpha}}_{\beta} - \frac{i}{2}\omega_{\mu\nu}{(J^{\mu\nu})^{\alpha}}_{\beta})V^{\beta}. \tag{3.19}
}


ここで  \omega_{12} = -\omega_{21} = \theta で,その他の成分が全てゼロの場合を考えよう. このとき (3.19) は


\begin{equation}
V \rightarrow \begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & -\theta & 0 \\
0 & \theta & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix}V \tag{3.20}
\end{equation}


となり,空間成分に関する部分を見ると,それはまさに先ほどの  z 軸周り( x,\ y 平面における)の  \theta 回転を与える行列  R_z\ (\theta \ll 1) である.

また, \omega_{01} = -\omega_{10} = \beta とおくと,


\begin{equation}
V \rightarrow \begin{pmatrix}
1 & \beta & 0 & 0 \\
\beta & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1
\end{pmatrix}V \tag{3.21}
\end{equation}


となる.これはまさに  x 軸方向への Lorentz ブーストである.このようにして, \omega の他の成分も別方向の回転やブーストを与える.

まとめ

3.1 節はこれで終わりです. SU(2) SO(3) 群を考えたあと,Lorentz 代数 (3.17) を求めました. ここでは (3.18) のような4元ベクトルに対する Lorentz 変換でしたが,今後も場に対して様々な変換を考えます.その際,基本的に (3.13) のような形が変換を与える行列となるのです.変換の種類(群の種類など)によって中身が変わるだけです.

群論を勉強すると理解が進むと思いますので,時間がある方はぜひそちらもやるとよいでしょう.
次回からは本格的に Dirac 場を扱います."変換則を調べ,その下で不変な Lagrangian を作る"という,お決まりの流れから始まります.

*1:この exp の形が変換を与える. 例えば,Dirac 場の doublet  \psi SU(2) 変換は, e^{-i{\theta}^i(x){\sigma}^i/2}\psi のようになる.

この変換の下で不変な Lagrangian を作れば,その理論は局所  SU(2) 対称性を持つことになる.その応用が Glashow-Weinberg-Salam 理論などである.
なお局所対称性とは,変換パラメータが座標依存性を持っていることを指す.逆に座標依存性を持っていないものはグローバル対称性という.

(難しければこの話は忘れてよい)

The Dirac Field (1)

今回から Chapter 3 に入ります.粒子は boson と fermion に大別され,Chapter 2 では boson である Klein-Gordon 粒子を扱いました.ここではもう一つの fermion について学ぶことができます.

3.1 Lorentz Invariance in Wave Equation

まずは Lorentz 不変性について学習する.なぜなら理論が持つべき対称性の一つは Lorentz 対称性だからである.

例えば,ある系で  \mathcal{D}\phi = 0 \mathcal{D} はある微分演算子 \phi はある場)が成り立っているときに,Lorentz 変換によって別の系へ移行しよう.変換後の場が同じ方程式を満たすなら*1,「 \mathcal{D}\phi = 0 は Lorentz 不変な方程式である」と言える.

さて,任意の Lorentz 変換は  4\times 4 行列  \Lambda を用いて以下のように書ける.

\displaystyle{
x^{\mu} \rightarrow x^{'\mu} = {\Lambda^{\mu}}_{\nu}x^{\nu}. \tag{3.1}
}


この変換の下で,場は以下のように変換する.

\displaystyle{
\phi(x) \rightarrow \phi'(x) = \phi(\Lambda^{-1}x). \tag{3.2}
}


ここで Klein-Gordon 理論の Lorentz 対称性を見てみよう.この変換に対して Lagrangian がどのように変化するかを調べる.
質量項  \frac{1}{2}m^2\phi^2 は (3.2) より,点  \Lambda^{-1}x に移るだけである.
また運動項の変換則を調べるにあたっては,以下の変換則

\displaystyle{
\partial_{\mu}\phi(x) \rightarrow \partial_{\mu}(\phi(\Lambda^{-1}x)) = {(\Lambda^{-1})^{\nu}}_{\mu}(\partial_{\nu}\phi)(\Lambda^{-1}x) \tag{3.3}
}


が使える.これと恒等式

\displaystyle{
{(\Lambda^{-1})^{\rho}}_{\mu}{(\Lambda^{-1})^{\sigma}}_{\nu}g^{\mu\nu} = g^{\rho\sigma} \tag{3.4}
}

より,以下を得る.


\begin{align}
(\partial_{\mu}\phi(x))^2 &\rightarrow g^{\mu\nu}(\partial_{\mu}\phi'(x))(\partial_{\mu}\phi'(x)) \\
&= g^{\mu\nu}[{(\Lambda^{-1})^{\rho}}_{\mu}\partial_{\rho}\phi][{(\Lambda^{-1})^{\sigma}}_{\nu}\partial_{\sigma}\phi](\Lambda^{-1}x) \\
&= g^{\rho\sigma}(\partial_{\rho}\phi)(\partial_{\sigma}\phi)(\Lambda^{-1}x) \\
&= (\partial_{\mu}\phi)^2(\Lambda^{-1}x).
\end{align}


したがって Klein-Gordon Lagrangian は単にスカラーのように変換する:

\displaystyle{
\mathcal{L}(x) \rightarrow \mathcal{L}(\Lambda^{-1}x). \tag{3.5}
}


当然, \mathcal{L} を時空全体で積分して得られる作用も Lorentz 不変である.
似たような計算で運動方程式(Klein-Gordon 方程式)が Lorentz 不変であることも確認できる.
以上より,Chapter 2 で扱った Klein-Gordon 理論が Lorentz 対称性を持っていることが確認できた.

さて,これまで扱ってきた変換則 (3.2) は,1成分の場に対して有効なもっとも簡単なものであった. ベクトル場のような複数成分を持つ場に対しては次のようにする.


\begin{align}
\text{under 3-dimensional rotations,}& \quad V^i(x) \rightarrow R^{ij}V^j(R^{-1}x); \\
\text{under Lorentz transformations,}& \quad V^{\mu}(x) \rightarrow {\Lambda^{\mu}}_{\nu}V^{\nu}(\Lambda^{-1}x).
\end{align}


テンソル場のように足が増えたものに対しても, \Lambda を加えることで変換則を作ることができる.
そして,このような変換則を持つ場から構成される Lorentz 不変な作用から,Lorentz 不変な方程式が得られる.
例えば,Maxwell 方程式は

\displaystyle{
\partial^{\mu}F_{\mu\nu} = 0 \qquad \text{or} \qquad \partial^2A_{\nu} - \partial_{\nu}\partial^{\mu}A_{\mu} = 0 \tag{3.6}
}


であり,これは Lagrangian

\displaystyle{
\mathcal{L}_{\text{Maxwell}} = -\frac{1}{4}(F_{\mu\nu})^2 = -\frac{1}{4}(\partial_{\mu}A_{\nu} - \partial_{\nu}A_{\mu}) \tag{3.7}
}


から導かれる.実際この Lagrangian も (3.5) のように変換する.

まとめ

今回はここまでにします.場の理論で重要となる Lorentz 対称性の話をして,Klein-Gordon 理論で確認しました.冒頭でも述べたように,今後扱う理論も基本的には Lorentz 対称性を持ちます. 次回はこの対称性を与える Lorentz 変換について,もう少し詳しく見ていきます.

少し難しいと感じた方は,このあたりで一度特殊相対性理論の復習をしておくとよいでしょう. また,群論についても多少勉強しておくと楽だと思います.

*1:ここでは場や粒子を変換の対象とする "active" な見方を採用する.
別の見方としては,座標系を対象とする "passive" な見方があり,参考書によってはこちらを採用している場合もあるので注意.

The Klein-Gordon Field (9)

■ The Klein-Gordon Propagator

(2.53) を使って  [\phi(x),\phi(y)] = \langle 0| [\phi(x),\phi(y)] |0\rangle を計算すると,


\begin{align}
\langle 0|[\phi(x),\phi(y)]|0\rangle &= \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\boldsymbol{p}}}\left(e^{-ip\cdot(x-y)} - e^{ip\cdot(x-y)}\right) \\\
&= \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\left\{\left.\frac{1}{2E_{\boldsymbol{p}}}e^{-ip\cdot(x-y)}\right|_{p^0 = E_{\boldsymbol{p}}} + \left.\frac{1}{-2E_{\boldsymbol{p}}}e^{-ip\cdot(x-y)}\right|_{p^0 = -E_{\boldsymbol{p}}}\right\} \\\
&= \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\int\frac{dp^0}{2\pi i}\frac{-1}{p^2 - m^2}e^{-ip\cdot(x-y)} \qquad (x^0 > y^0). \hspace{1cm} \text{(2.54)}
\end{align}


なお最後の変形では  x^{0} \gt y^{0} を仮定した.この計算は, p^{0} 積分被積分関数 p^{0} = \pm E_{\boldsymbol{p}} に極を持つ複素関数だと思って留数積分を実行すれば確かめられる.なお積分経路は2つの極を含んで下側で閉じるものを採用する.
一方で  x^{0} \lt y^{0} のときは経路を上側で閉じ,このとき極を含まないので積分はゼロとなる.

これらをまとめると以下のように書ける.

\displaystyle{
D_R(x-y) = \theta(x^0 - y^0)\langle 0|[\phi(x),\phi(y)]|0\rangle. \tag{2.55}
}


これに Klein-Gordon 演算子を作用させると*1

\displaystyle{
(\partial^2 + m^2)D_R(x-y) = -i\delta^{(4)}(x-y). \tag{2.56}
}


これにより, D_R(x-y) は Klein-Gordon 演算子の Green 関数であることが分かる.

(2.54) はこれの Fourier 変換からも導出することができる.実際,

\displaystyle{
D_R(x-y) = int\frac{d^4p}{(2\pi)^4}e^{-ip\cdot(x-y)}\tilde{D}_R(p). \tag{2.57}
}


と Fourier 変換したものを (2.56) に代入すれば,

\displaystyle{
\int\frac{d^4p}{(2\pi)^4}(-p^2 + m^2)e^{-ip\cdot(x-y)}\tilde{D}_R(p) = -i\int\frac{d^4p}{(2\pi)^4}e^{-ip\cdot(x-y)}
}


となるので,両辺を比較して

\displaystyle{
(-p^2 + m^2)\tilde{D}_R(p) = -i.
}


これを (2.57) に戻せば,

\displaystyle{
D_R(x-y) = \int\frac{d^4p}{(2\pi)^4}\frac{i}{p^2 - m^2}e^{-ip\cdot(x-y)}. \tag{2.58}
}


これの  p^{0} 積分を評価する際の積分経路は,極の含み方の違いから4種類ある.
そのうちの1つでこれを計算した結果が,まさに (2.54) だったのだ.


なお,今後は以下の取り方が便利である.

これは Feynman prescription と呼ばれる.
この処方を用いるときは,

\displaystyle{
D_F(x-y) = \int\frac{d^4p}{(2\pi)^4}\frac{i}{p^2 - m^2 + i\epsilon}e^{-ip\cdot(x-y)} \tag{2.59}
}


のようにすればよい. このとき極は  p^{0} = \pm(E_{\boldsymbol{P}} - i\epsilon) にあるため, x^{0} \gt y^{0} のときは下側の半円で積分すれば (2.50) が得られる.
一方で  x^{0} \lt y^{0} のときは上側の半円で積分すれば  x y が入れ替わったものが得られる.


\begin{align}
D_F(x-y) &= \begin{cases}
D(x-y) \quad \text{for $x^0 > y^0$} \\
D(y-x) \quad \text{for $x^0 < y^0$}
\end{cases} \\\
&= \theta(x^0-y^0)\langle 0|[\phi(x),\phi(y)]|0\rangle + \theta(y^0-x^0)\langle 0|[\phi(y),\phi(x)]|0\rangle \\\
&\equiv \langle 0|T\phi(x)\phi(y)|0\rangle. \tag{2.60}
\end{align}


最後の行の  T は時間順序積を表す.これは左側が最も新しくなるように演算子を配置するという意味である.(2.56) のときと同様の計算から, D_F が Klein-Gordon 演算子の Green 関数であることが分かる.

さて,(2.59),(2.60) はこの章で最も重要な結果と言ってもよい.Green 関数  D_F(x-y) は Klein-Gordon 粒子の Feynman propagator と呼ばれる. これは,後に学ぶ重要な量である相関関数を導出する際に役立つ Feynman rule の一部である.


■ Particle Creation by a Classical Source

これまでに学んできたものは,相互作用がない自由 Klein-Gordon 理論である.しかし理想的には相互作用がある理論を考えたいわけなので,まだ準備不足だ.
ただ,現時点で扱うことができる相互作用も存在するため,ここではそれについて紹介する.

外部の古典的なソース  j(x) に結合した Kelin-Gordon 場を考える.このとき,場の方程式は

\displaystyle{
(\partial^2 + m^2)\phi(x) = j(x). \tag{2.61}
}


ここで  j(x) は有限の時間間隔に対してのみゼロでないとする.

(2.61) は以下の Lagrangian から導かれる.

\displaystyle{
\mathcal{L} = \frac{1}{2}(\partial_{\mu}\phi)^2 - \frac{1}{2}m^2\phi^2 + j(x)\phi(x). \tag{2.62}
}


 j(x) がゼロの場合の  \phi(x) の形は既に知っている.

\displaystyle{
\phi_0(x) = \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{\sqrt{2E_{\boldsymbol{p}}}}
\left(a_{\boldsymbol{p}}e^{-ip\cdot x} + a^{\dagger}_{\boldsymbol{p}}e^{ip\cdot x}\right).
}


つまり,もしソースが無ければ,これは全ての時間において運動方程式の解となる.
ソースがある場合の解は,Green 関数を用いて以下のように構成できる.


\begin{equation}
\begin{split}
\phi(x) =& \phi_0(x) + i\int d^4y\ D_R(x-y)j(y) \\
=& \phi_0(x) + i\int d^4y\int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\boldsymbol{p}}}\theta(x^0-y^0) \\
&\times \left(e^{-ip\cdot(x-y) - e^{ip\cdot(x-y)}}\right)j(y).
\end{split}
\end{equation}


 j(x) が有限値を取る時間から十分経ったとき, \theta 関数は全積分領域において1となる.
このとき, j(x) の Fourier 変換

\displaystyle{
\tilde{\jmath}(p) = \int d^4y\ e^{ip\cdot y}j(y)
}


を使うと,(2.63) は以下のように変形できる.

\displaystyle{
\phi(x) = \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{\sqrt{2E_{\boldsymbol{p}}}}
\left\{\left(a_{\boldsymbol{p}} + \frac{i}{\sqrt{2E_{\boldsymbol{p}}}}\tilde{\jmath}(p)\right)e^{-ip\cdot x} + \mathrm{h.c.}\right\}. \tag{2.64}
}


(2.47) と比較すれば, j(x) が一度作用した後の Hamiltonian を推測できる. a_{\boldsymbol{p}} (a_{\boldsymbol{p}} + i\tilde{\jmath}/\sqrt{2E_{\boldsymbol{p}}}) に置き換えれば,

\displaystyle{
H = \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}E_{\boldsymbol{p}}\left(a^{\dagger}_{\boldsymbol{p}} - \frac{i}{\sqrt{2E_{\boldsymbol{p}}}}\tilde{\jmath}^{\ast}(p)\right)\left(a_{\boldsymbol{p}} + \frac{i}{\sqrt{2E_{\boldsymbol{p}}}}\tilde{\jmath}(p)\right).
}


これを用いれば,ソースが一度作用した後の系のエネルギーが計算できる*2

\displaystyle{
\langle 0|H|0\rangle = \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2}\left|\tilde{\jmath}(p)\right|^2. \tag{2.65}
}


ここで  |0\rangle は自由理論の真空を表す.これは, \left|\tilde{\jmath}(p)\right|^2/2E_{\boldsymbol{p}} を運動量  p を持った粒子の生成確率と捉えれば理解できる.このとき生成される粒子の総数は,

\displaystyle{
\int dN = \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\boldsymbol{p}}}\left|\tilde{\jmath}(p)\right|^2. \tag{2.66}
}


これより,粒子の生成には on-shell(つまり  p^2 = m^2)の成分のみが寄与を与えることが分かる.

まとめ

これで Chapter 2 は全て終わりです.
今回は主に Klein-Gordon propagator と呼ばれる重要な式と,それに関連する事柄について学びました.そして終盤は相互作用理論について少し触れました.

素粒子論が対象とする物理現象は「粒子が衝突して新たな粒子が生成される」といったものです.あらゆる過程は確率的に起こるため,その生成確率なんかを計算したいわけです.これを理論的に可能にする手法が Feynman diagram による摂動計算です.詳しくやるのは Chapter 4 以降ですが,この手法の中に propagator という大事な概念が出てきます.これの Klein-Gordon 粒子バージョンが,今回学んだものです. また Feynman prescription も,Feynman diagram を考える上で大切なものになっています.

というわけで,今回の内容は今後使う大事な事柄がたくさんあります.頭の片隅に置いておくと,この先勉強するときに役立つでしょう.

*1:Klein-Gordon 方程式や階段関数の微分デルタ関数であることなどを用いて愚直に計算すればよい.

*2:今は Heisenberg 描像なので,時間発展は演算子が担う.ゆえに未来の Hamiltonian は過去の生成・消滅演算子を使って書くことができるはずである.

The Klein-Gordon Field (8)

■ Causality

さて,Klein-Gordon 場の量子論の枠組みがほとんど完成したので,因果律について再考してみる.

ある粒子が位置  y から  x に伝播する振幅は,(2.29) や (2.47) を用いれば次のように計算できる.

\displaystyle{
D(x-y) = \langle 0|\phi(x)\phi(y)|0\rangle = \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\boldsymbol{p}}}e^{-ip\cdot(x-y)}. \tag{2.50}
}


この形の積分は Lorentz 不変であった.次はこの量を具体的に計算してみる.


まずは  x^0-y^0 = t,\ \boldsymbol{x}-\boldsymbol{y} = 0 の場合を考える.これは光円錐の内側(time-like 領域)の一点である.
この計算は極座標

\displaystyle{
p_x = p\sin\theta\cos\varphi, \qquad p_y = p\sin\theta\sin\varphi, \qquad p_z = p\cos\theta
}


に移り,途中で  E = \sqrt{p^2 + m^2} と変数変換すれば計算できる.


\begin{equation}
\begin{split}
D(x-y) &= \frac{4\pi}{(2\pi)^3}\int^{\infty}_{0}dp\ \frac{p^2}{2\sqrt{p^2 + m^2}}e^{-i\sqrt{p^2 + m^2}t} \\\
&= \frac{1}{4\pi^2}\int^{\infty}_{m}dE\ \sqrt{E^2 - m^2}e^{-iEt} \\\
&\sim e^{-imt} \qquad (t \rightarrow \infty).
\end{split} \tag{2.51}
\end{equation}


次は  x^0-y^0 = 0,\ \boldsymbol{x}-\boldsymbol{y} = \boldsymbol{r} の場合を考える.これは光円錐の外側(space-like 領域)の一点である.
このとき,上と同様に極座標に移って計算を進めると,


\begin{align}
D(x-y) &= \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\boldsymbol{p}}}e^{i\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{r}} \\\
&= \frac{2\pi}{(2\pi)^3}\int^{\infty}_{0}dp\ \frac{p^2}{2E_{\boldsymbol{p}}}\frac{e^{ipr} - e^{-ipr}}{ipr} \\\
&= \frac{-i}{2(2\pi)^2r}\int^{\infty}_{-\infty}dp\ \frac{pe^{ipr}}{\sqrt{p^2 + m^2}}.
\end{align}


これを  p複素関数と見ると,それは虚軸上に  \pm im から始まる branch cut を持っている.
この積分を評価するために,以下の積分経路を考える.

積分経路

このとき  C_1,\ C_3,\ C_5積分に寄与しないので*1,コーシーの積分定理より,

\displaystyle{
\int_{C_6}f(p)dp = -\left(\int_{C_2}f(p)dp + \int_{C_4}f(p)dp\right).
}


 \varepsilon > 0 に対して, C_2:p = \varepsilon + ix C_4:p = -\varepsilon + ix と書けるので,


\renewcommand{\Re}{\operatorname{Re}}
\begin{align}
\int_{-R}^{R}dp\frac{pe^{ipr}}{\sqrt{p^2 + m^2}} &= -\int_{R}^{m}idx\frac{(\varepsilon + ix)e^{i(\varepsilon + ix)r}}{\sqrt{(\varepsilon + ix)^2 + m^2}} - \int_{m}^{R}idx\frac{(-\varepsilon + ix)e^{i(-\varepsilon + ix)r}}{\sqrt{(-\varepsilon + ix)^2 + m^2}} \\\
&= \int_{m}^{R}idx\ f(x) + \int_{m}^{R}idx\ f^{\ast}(x) \\\
&= 2i\int_{m}^{R}\Re f(x)dx \\\
&= 2i\Re \left[\int_{m}^{R}\frac{(\varepsilon + ix)e^{i(\varepsilon + ix)r}}{\sqrt{(\varepsilon + ix)^2 + m^2}}dx\right] \\\
&= 2i\Re\left[\int_{-i\varepsilon + m}^{-i\varepsilon + R}\frac{i\rho e^{-\rho r}}{\sqrt{-\rho^2 + m^2}}d\rho\right] \qquad (\rho = -ip) \\\
&= 2i\int_{m}^{R}\frac{\rho e^{-\rho r}}{\sqrt{\rho^2 - m^2}}d\rho \qquad (\varepsilon\rightarrow 0).
\end{align}


したがって  R\rightarrow\infty とすれば,

\displaystyle{
D(x-y) = \frac{1}{4\pi^2r}\int_{m}^{\infty}d\rho\frac{\rho e^{-\rho r}}{\sqrt{\rho^2 + m^2}} \underset{r\rightarrow\infty}{\sim} e^{-mr}. \tag{2.52}
}


以上の計算から分かるように,光円錐の外側で振幅がゼロにならない.
これでは因果律の問題が解決していないように思える.


しかし因果律について厳密に議論するには,交換子がゼロか否かを調べる必要がある.これは以下のように計算できる.


\begin{align}
\left[\phi(x),\phi(y)\right] &= \int\frac{d^3pd^3q}{(2\pi)^6}\frac{1}{\sqrt{2E_{\boldsymbol{p}}2E_{\boldsymbol{q}}}}\left[\left(a_{\boldsymbol{p}}e^{-ip\cdot x} + a^{\dagger}_{\boldsymbol{p}}e^{ip\cdot x}\right),\left(a_{\boldsymbol{q}}e^{-iq\cdot y} + a^{\dagger}_{\boldsymbol{q}}e^{iq\cdot y}\right)\right] \\\
&= \int\frac{d^3p}{(2\pi)^3}\frac{1}{2E_{\boldsymbol{p}}}\left(e^{-ip\cdot(x-y)} - e^{ip\cdot(x-y)}\right) \\\
&= D(x-y) - D(y-x). \hspace{8.2cm} \text{(2.53)}
\end{align}


ここで, (x-y)^{2} \lt 0 なる光円錐の外側(space-like 領域)では  (x-y) \rightarrow -(x-y) の連続 Lorentz 変換が可能であることに注目する.
したがって (2.53) から,この領域では交換子がゼロとなることが分かる*2.つまり因果律は保たれる.

一方で,光円錐の内側(time-like 領域)ではこのような Lorentz 変換ができない.つまりこの領域では振幅がゼロにならず,従来の不確定性原理が成り立つ.

こうして因果律の問題は解決された.


なお,ここでは実 Klein-Gordon 場のみを扱ったが,本当は複素 Klein-Gordon 場も含めて考えるのが望ましい.
そのときは粒子と反粒子が区別され,交換子がゼロになる機構と密接に関わる.詳細は問題 2.2 を解けば分かるだろう.

まとめ

今回は因果律の問題を再考しました.
時空点は結局 Lorentz 変換で移れるので,time-like 領域と space-like 領域内で特定の場合をそれぞれ1つ選び,そこでの振幅を計算したのです.
より詳細には交換子を計算したわけですが,この動機は不確定性原理を思い出せば分かります.

  • 交換子がゼロでない:一方の点での測定がもう一方の測定に影響を与えず,不確定性原理が成り立つ.

  • 交換子がゼロ:二点での測定が互いに影響を与えず,不確定性原理が成り立たない.

よって,二点間距離が超光速の space-like 領域で交換子がゼロだと,因果律に反するわけです.
しかし実際に計算してみると,space-like 領域では交換子がゼロになってくれたので,因果律の問題は生じませんでした.

また,途中の計算はやや複雑でしたが,同様の計算は今後もやりますので,複素積分はよく復習しておきましょう.

*1:被積分関数に含まれる  e^{ipr} p = x + iy \ (y \geq 0) を代入すると, e^{(-y + ix)r} となる.計算の最後で  R\rightarrow\infty とする操作は  y\rightarrow\infty でもあり,このとき  e^{-yr} が極めて小さくなるため, C_1,\ C_5 からの寄与は無視できる.また, \varepsilon\rightarrow 0 とするので  C_3 からの寄与も無視できる.

なお  y \leq 0 の場合ではこの議論が使えない.これが積分経路を上側で閉じる( y \geq 0 とする)理由である.

*2:Lorentz 変換では,time-like 領域内の点は time-like 領域に,space-like 領域内の点は space-like 領域にのみ移るのだった.
したがって space-like 領域内のある二点で交換子がゼロなら,その領域全てでゼロである.この"ある二点"での計算結果が (2.52) であった.